テリトリー・マガジン

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ボクの子供探検記 -ボクから君への手紙(エンタール月PM3.9 トーナムの境界線より)-

2022.12.06(火)

”エンタール月PM3.9  トーナムの境界線より(封筒の表の右下にこう書かれている)”

君へ

聞こえているかな?

この手紙を読んでいると言うことは、やっと君がボクに気づき始めたということだね。
本当に長かったよここまで来るのに。
本当に長かった。
待つって、本当につらいことだね。

そうだよね。こんなことを君に言ったって分からないよね。

 

それでもいつかこの手紙が君のもとへ渡るのを信じて、ボクは君のことをずっとずっと待っていたんだ。
この時が来るのを、ずっとずっと遥か遠い昔から。

これはボクが、トーナムの境界線を歩いていたときに、前もって君に宛てて書いておいた手紙。
多分知らないよねボクがこんなことをしていたの。

君はあの時、前を見つめることに必死だったんだ。
君は境界線の狭間を歩いているときだって、後ろにいるボクが何をしているのかなんて気にも留めなかった。

ボクが君に「あの小惑星は収縮するのかい?」と話しかけたって、君は血眼になって
「今はそんなことに構っている暇はない!いいか、未来だけを見るんだ!俺たちが目指ししているのはガイアだ!」
とかなんとか叫ぶだけで、ボクには君が何を言っているのかさっぱりだったよ。

あの時は本当に悪かった。そんなに差し迫っていたのだね。

君は、夜になったって一秒たりとも休むということをしなかった。

「大丈夫。太陽は明日だって、俺たちをちゃんと守護してくださる」だとか、「もうこれ以上、彼らに迷惑をかけてはいけない。早くガイアに辿りつかなくてはいけないんだ」だとか、呪文のようなことを月の方向を見つめながらぶつぶつ呟いていたよね。

だからこの手紙を書いてしまうのなんて、容易なことだったよ。
必死になっている君がいたから、ボクはこんなにも冷静になれたんだ。

君は、あれから自分の身に何が起こったのかを覚えているのかい?
多分忘れてしまっているよね。

 

それでもボクは君のことをあの日からずっとずっと近くから見守ってきたんだ。
くる日もくる日も気付かない君に、ボクは何度も話しかけた。
ボクはあまり昔から泣かない。だって泣くようなことはこの世界に一つもないと思って生きてきたから。

 

それでも、1万と9回目に君に無視されたときは、初めて体の奥の方が溶けた感覚を覚えたよ。
泣くのってこういう感覚なのかな?

 

君が本当に全てを忘れてしまったのだと受け入れるようになったのは、あの日からどれくらいだったかな、、、さてもう忘れたよ、そんな時のことは。

(ここから下は汚れていて、読み取れない。)

確かに君にとっては、あの出来事の数々は遥か遠い昔の話になってしまったかもしれないけれど、ボクにはあれがまだ昨日のことのように感じられてならないんだ。

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。。。。。。。。。。。。。。。。。(謎の記号が描かれている)

 

ボクたちは毎日一緒に、冒険していたじゃないか?
本当に忘れてしまったのかい。

(このあたりは文字が滲んで正確に読み取れない。当時の存在が流した涙の跡だと言われている)

今ボクは境界線の狭間から、前を行く君を見つめている。
ボクは君がここから居なくなってとしても、君のことをずっと信じている。
例え、君の背中が僕に語りかけることをしなくなっても、僕は君の背中をずっと見守っている。これからもずっと。

君が忘れるのか、忘れないのかなんてボクにとってはどうでもいい。
ボクたちがずっと共にしてきた冒険は、ボクたちの間からは一生消えない宝物なんだ。

だからどうか、銀河の全ての存在に伝えておくれ。
この手紙が君に読まれたその瞬間、ボクたちの旅は再び開始されると。

 

それじゃあ、またね。ガイアに乾杯、幸運を祈っているよ。

 

ボク

”これを読んでくれている君には、これがどういう意味なのか後で説明するね。
今のところは座標だと思って。そう思ってくれればそのうち分かるから。
(便箋の裏に、走り書きでこう書かれている)”